【山の記録】南アルプス、歩いてみたらハードコース=椹島~千枚岳、荒川岳(東岳)~二軒小屋
3000m級の山嶺の紅葉を Nikon1 J5で撮りたい
(↑左側は悪沢岳、右は丸山)
<2015年9月19日~22日、シルバーウイークに3泊4日で南アルプス南部を歩いた。同行者はいつものD山岳会メンバーの男性4、女性1人。今回はNikon1 J5を持参し、スマホ写真とはひと味違った山岳フォトを撮るのも目的の一つだった。だが……。久々の健脚コースに、足腰がたいそうな悲鳴を上げた>
【第1日 9/19(土)】静岡駅に集合、半日がかりで椹島まで入る
06:05 博多駅発のぞみに乗り、途中ひかりに乗り換えて静岡駅着10:34。これまでの「例外なき雨男」がウソのような、絶好の登山日和である。東京組の5人と駅前で合流。その中のE先輩がマイカーで来たので、畑薙第一ダムまで同乗させてもらう。途中、井川五郎ダムの手前で見つけたレストラン「Casso横川」に立ち寄る。カレー、珈琲は予想外においしかった。経営者夫婦に店名の由来を聞くと「カッソの真ん中のツを取ったら?」「カソ…。ああ、『過疎』ってこと?」「はい」とサラリ。
14:30 畑薙第一ダム着。広い無料駐車場は、県外ナンバーの車で満杯だ。隙間に停める。椹島(さわらじま)行きの特殊東海フォレスト社のシャトルバスが出る予定だったが、客の多さにダイヤが乱れに乱れ、乗れたのは15:20だった。
16:20 この日の目的地、椹島着。一帯は東海バルブの創業者の時代に開発され、中心にある椹島ロッジはかつて植林、道路管理、電力工事関係者たちの宿舎だったという。ゆえに山小屋らしくない“市営アパート”タイプの広い建物。布団、毛布も清潔で風呂もあり、ぐっすり休めた。ロッジの周りには、テント場、ゲストハウス、記念館、登山者用素泊まり小屋などが整備されている。
【第2日 9/20(日)】千枚小屋までひたすら登る
06:00 朝食。07:00 椹島ロッジ出発。その時撮った下の写真では全員余裕である。
樹林の中のきつい坂を上る。
こんな森の中を行く。100年ほど前に古木が間引かれ、植林されたものという。
清水平(11:15)、蕨坂(12:20)、荒川・赤石展望台(12:35)、そして下の写真・駒鳥池(14:35)と、足を進める。きつい。
歩き始めて8時間半、いいかげん顎も上がり始めたころに千枚小屋に到着した。15:30。晴れてはいるのだが周囲はガスで見えない。小屋の外に大勢の登山客。きょうは150人は泊まるという。すし詰め状態を覚悟したが、案の定、別館の土間の板敷にColemanの寝袋と毛布1枚、枕を与えられ、左右、頭上足下の4辺で他の登山者と密着、寝返りさえ打てない状態のまま消灯。予約がなくても、来る客全員を泊めるのが山小屋の義務だから仕方ない、か。わが登山部メンバーの中にも「一睡もできなかった」人あり。こういう時は、眠ろうとしてはダメだ。横になって体を休めつつ、黎明を待とうと思っていると、いつの間にかまどろんでいる。(それすら妨害するデカいびきには、耳栓が有効)
【第3日 9/21(月)】絶景の稜線歩きと二軒小屋ロッジまでの長い下り
04:00 起床。小屋の前に出て、ご来光に備える。前日の上り8時間半の疲れと睡眠不足で体がだるい。
05:30 日の出。富士山のやや左手の雲海から太陽が上がる。オレンジ、赤に染まった空に、黄金色の光があふれだし、雲が彩りを深める。あまりの神々しさに言葉をなくす。木曽駒ケ岳のご来光も見事だったが、ここ千枚も負けず劣らずいい。
(↑太田芳登氏撮影。カメラと格闘中のボク)
しばらくすると、富士が表情を変えてきた。
最初のピーク、千枚岳へ
6:50 千枚小屋を出発。大きなザックは小屋に預け、サブザックで上を往復することにした。樹林帯の中の急坂、それに続く気持ちの良い稜線を、まずは千枚岳(2880m)をめざす。
(↑太田芳登氏撮影)
07:35 千枚岳ピーク(2880m)に立つ。後方が悪沢岳
(↑舟田好範氏撮影)
(全員で記念写真)
360度の展望、眼前に塩見岳、その向こうに白根三山、地蔵尾根。右手には奥秩父、左手には遠く槍・穂高連峰も望めた。
そしてこれは南西方向、赤石岳(3120.5m)の威容!
、
08:35 丸山(3032m)到着。全国どこへ行ってもこの名前の山がある。最近では西穂高岳独標の手前にもあった記憶。3000メートル級の山にこの名が付くのは嬉しいが、山容が丸けりゃ「丸山」かいっ、という安易さにはへこむ。
時計を見ると、予想ペースよりかなり遅れている。悪沢岳(東岳)往復は無理だろう。O隊長と相談の上、悪沢岳手前にある小ピークまで行って引き返すことを決断した。9:20 その小ピーク。そこで撮ったのが下の一枚だ。悪沢はすぐそこなのに。くやしさと安全第一の決意が交錯する。
雲海の上にある稜線を下る。至福の時間。
(↑太田芳登氏撮影)
10:05 もう一度千枚岳頂上を通過し、0:45 千枚小屋に戻る。小屋の前で昼食。
さあ、二軒小屋まで一気に下ろう
11:20 千枚小屋に預けておいた荷物をすべて背負い、下山にかかる。二軒小屋ロッジまでは地図上のコースタイムは4時間半ほどだが、わが山岳部はもう少しかかることだろう。きつい下りは承知の上、足の親指爪先が血豆になるのも必至だ。
こんなところをどんどん下る。膝が笑いだす。滑落にも要注意
(↑太田芳登氏撮影)
原生林を思わせる下山道。自然の大きさよ。
(←写真家・遠藤湖舟氏撮影)
万斧沢(マンノーさわ)の頭(13:15)、旧ロボット雨量計(特定できず、14:15ころか)を過ぎて、ひたすら下る。膝はガクガク、だんだん暗くなってきて、足を早めたくなるが、体力消耗でペースダウンを強いられる。ボクは、高山植物を愛でる余裕はなかったが、それでも何種類かはカメラに収めた下はフジアザミでしょうか。
コバノコゴメグサ(別名ヒメコゴメグサ)
ヤマハハコ
樹林帯の坂道、岩が浮いている道、最後は崩れ落ちそうな斜面をジグザグに下り、むき出しの鉄パイプの人工階段を下りるとようやく吊り橋のたもとに着いた。千枚小屋から4時間半のコースタイムは、いったい誰のペースだろう!! われわれは6時間要した。しかも、千枚小屋〜悪沢岳への上りを入れると、この日だけで10時間歩いた計算だ。
16:40 とぼとぼ歩いて二軒小屋ロッジに着いた。全員が相当の疲労度だが、無事下山は何よりの結果である。O隊長が宿泊予約をしてくれていたため、すんなり個室(ドミートリーと呼ばれる二段ベッドの部屋)に通される。
生ビールがこれほどうまいとは…
「一度は泊まってみたい山小屋」「もう一度泊まりたい山小屋」などの調査で最上位人気だという二軒小屋ロッジ。確かに、中に入ってみれば快適の一言に尽きる。宿泊者の数をあらかじめ20数人に絞っているから、極めて落ち着いた雰囲気である。ログハウス調の3階建てロッジ、重厚な塗装の木材をふんだんに使った内装。ひのき風呂もあれば、トイレは水洗、何よりベッドと布団が清潔だ。素泊り8,000円はちょっと高いが、明日の朝、ロッジ前から送りの車を出してくれるのが一番のサービスと言えるだろう。
到着直後、猛烈に美味い生ビールを2杯、立て続けに飲んだ。さらにワインを赤白1本ずつ。持参のウイスキー1ビン。椹島からの上り8時間半、きょうの下り中心の10時間の、しんどかった思い出を語りあおう。なこと言っていたくせに、午後8時半すぎには全員ぐっすりと眠りに落ちていた。 (ヒノキ風呂は最高でした!)
(舟田好範氏撮影)
【第4日 9/22(火)】快適な二軒小屋ロッジ泊の朝 帰路につく
06:00 起床。二軒小屋ロッジの周辺散策。コバルトブルーに光る田代池など。
(↑舟田好範氏撮影)
08:30 二軒小屋ロッジ前から出る四駆パジェロに乗りこむ。ロッジに泊まった客だけがこのサービスを受けられる。実は畑薙第1ダムより奥の道は、落石の危険から営業運行が認められず、特殊東海フォレスト社としては「泊まり客へのサービス」として無料送迎をしているのだそうだ。宿泊代が高めなのは、そういうカラクリ。
1時間で椹島。マイクロバスに乗り換えて1時間、E先輩の車が停まっている畑薙第一ダム駐車場に到着した。
このあと、静岡駅に向かう途中、もう一度過疎の「Casso」に立ち寄り、缶ビールとカレー、パスタなどで軽い打ち上げをした。好天に恵まれ、怪我もなく、健脚向きコースを歩き切った満足感で、全員がホクホク顔。
ボクは静岡駅から、午後2時過ぎの博多行き新幹線に乗り込んだのだった。(自分へのご褒美の意味で、グリーン車だもんね笑)