まるしん's diary

丸山伸一のブログです。日常の出来事(主にプライベート)、読書・映画評などを綴ります。

和田竜『村上海賊の娘』(上・下、新潮社)~最近読んだ本

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 久しぶりのBook Review。『村上海賊の娘』を2014年6月19日読了。


 時は天正4年(1576年)。京都から西に勢力を伸ばそうとしていた織田信長は、大坂本願寺(現在の大阪城の場所)を激しく攻めたてる。<いわゆる「石山合戦」。この部分は、NHK大河ドラマ黒田官兵衛」と時代がかぶる>

 本願寺から、海路を用いての兵糧入れ(物資補給)を頼まれた毛利家は、瀬戸内・芸予諸島を根城にしていた「海賊王」こと村上武吉を頼ろうとした。その娘、景(きょう、20歳)は、姫君でありながら、男勝りの海賊働きに明け暮れ、地元では腰入れ先もない悍婦(かんぷ=気性の荒い女)であり、醜女(しこめ=ブス)であると評されていた。

 

 景は、本願寺に立て籠もった貧しい百姓出身の一向宗門徒らを救おうと、織田方の大軍が陣取る難波海に向かう。織田方の総大将は剛強無双の巨漢、真鍋七五三兵衛(まなべ・しめのひょうえ)。景に追従した毛利・村上連合軍と、七五三兵衛率いる泉州海賊との間で壮絶な「木津川合戦」が起こる。七五三兵衛は景に惚れている。景も七五三兵衛の武辺に心底感服している。海賊船の上での、一対一の壮絶な果し合いが始まるのだ。

 著者の和田竜は、2007年『のぼうの城』でデビューした45歳。時代考証が実にしっかりしており、荒唐無稽な展開も不自然さを感じさせない。話し言葉(映画化されればセリフ)の妙や、突っ込みとボケで読者を笑わせることも忘れない「エンターテインメント時代劇」の第一人者と言えるだろう。

 

 新聞広告にあった「2014年本屋大賞・大賞受賞作」のコピーに惹かれて購入した。上下で970ページを超える長編とはいえ、読了までに1か月以上を要したのはどうしてだろう。ふむ、仕事がずいぶん忙しかったことも当然ある。だが、原典や資料をもとに、史実に忠実に細かく書く部分と、漫画の吹き出しを思わせるぞんざいな関西弁のセリフとが最後までボクの中では融和せず、読み通すのに時間がかかったということだろう。

 でも、ラストはよかった。和田竜が景に贈った1行は、ボクとまったく同じ思いである。関西弁で言うところの「おもろい女」、つまり「とびっきりイイ女」なのだ、景姫は❤。映画化の話があるようだ。ボクの中では、景にぴったりなのは榮倉奈々なのだが…。