まるしん's diary

丸山伸一のブログです。日常の出来事(主にプライベート)、読書・映画評などを綴ります。

Book Review

『男ともだち』(千早 茜著、文藝春秋)~最近読んだ本

2015年2月25日読了。もろに世代ギャップを感じました。アラサー男女が演じる「月9ドラマ」の脚本みたいな内容だったから。でも古典文学の「恋愛論」のような懐かしい趣もあって、実は二晩で読み終えました(笑)。 主人公の女性は29歳のイラストレ…

『東京自叙伝』(奥泉光著、集英社)~最近読んだ本

2015.2.20読了。最近読んだ本の中では一番インパクトがあったように思う。ネット上の書評で見つけた「怪作」という表現がぴったり。 「多重」ならぬ「多在人格」の「東京の地霊」が主人公 主人公「私」は、太古から東京に棲みつく「地霊」だそうだ。時空を超…

『巨人V9とその時代』(山室寛之著、中央公論新社)~最近読んだ本

2014年11月13日付「スポーツ報知」に、わが師匠の近著の書評を書かせてもらいました。(以下の記事PDFが不鮮明なので下段にテキスト掲示します) 「プロ野球黄金期」のクロニクル 著者・山室寛之氏は、ボクが読売新聞社会部の駆け出し記者時代に、警視庁記者…

漱石『こころ』の再読と、姜尚中『心の力』

朝日新聞で夏目漱石「こころ」の<100年ぶり連載>が終了した9月末、オピニオン面の「朝日川柳」に、こんな一首が選ばれていた。 ☆先生も奥様だけには言いません 千葉県 村上健 なるほど、漱石「こころ」に出てくる先生は、「私」宛てに遺した長い長い手紙の…

『荒神』(宮部みゆき、朝日新聞出版)~最近読んだ本

2014年10月4日読了 時代は元禄、陸奥の国の永津野藩と香山藩は、かつては主従の関係にあったが、関ヶ原の戦を機に、いがみ合うようになる。永津野藩の重臣、曽谷弾正は、山間部で養蚕業を起こすなど財政の立て直しに手腕をふるう一方で、「牛頭馬頭(ごずめ…

『影法師』(百田尚樹)、『まほろ駅前狂騒曲』(三浦しをん)…最近読んだ本

2014年9月14日。『影法師』(百田尚樹、講談社文庫)を5日間で読了。百田には珍しい時代小説だ。文章に無駄な脂肪がなく、さらりと読め、かつ面白かった。 『永遠の0』に通じる「義とは何か」 NHK経営委員としての百田の発言が、政治的中立を逸脱し右寄りだ…

『私の男』(桜庭一樹)、『虚ろな十字架』(東野圭吾)、『閉鎖病棟』(帚木蓬生)~最近読んだ本2014.8~9月

桜庭一樹『私の男』(文春文庫)読了。封切られた同名映画が話題になった。その映画に好きな女優二階堂ふみが出演している。さっそく文春文庫を手に取った。 1993年の奥尻地震で家族を亡くした9歳の「花」は、紋別に住む親戚の25歳の男、淳悟に引き取られ養…

和田竜『村上海賊の娘』(上・下、新潮社)~最近読んだ本

久しぶりのBook Review。『村上海賊の娘』を2014年6月19日読了。 時は天正4年(1576年)。京都から西に勢力を伸ばそうとしていた織田信長は、大坂本願寺(現在の大阪城の場所)を激しく攻めたてる。<いわゆる「石山合戦」。この部分は、NHKの大河ドラマ「黒…

『蜩ノ記』『ゴールデン・スランバー』~最近読んだ本 2014.3.18

◆『蜩ノ記』(葉室麟、祥伝社文庫) 作者・葉室麟(62)は北九州生まれの元地方紙記者。『蜩ノ記(ひぐらしのき)』は2年前の直木賞作。 江戸後期、豊後・羽根(ぶんご・うね)藩(現在の大分県の一部)の檀野庄三郎は、藩邸内で同僚相手に刃物沙汰を起こし…

『櫛挽道守』(木内昇、集英社)~2014.3.1

木内昇の『櫛挽道守(くしひきちもり)』を読みました。直木賞作家(2011年『漂砂のうたう』)だけあって、リズムの良い、拍子をとるような、それでいて抑え気味な文章の運びは見事、斜め読みなどではなく、真摯にじっくりと読み干した1冊です。 時代は黒船…

『ミッドナイト・バス』『ペテロの葬列』『怒り』『一刀斎夢録』~最近読んだ本 2014.2.27

最近読んだ本を、まとめておきます。(一部FBにアップ済み) 【2014年2月21日公開】ソチ五輪。朝方まで会社でLIVE映像観ながら新聞作り。タクシー帰宅すると、疲れてるのに、なぜか目は冴えちゃうんですね。読書がすすむクンったらありゃしない。『ミッドナ…

Book Review 『終わらざる夏』(上~下、浅田次郎、集英社文庫)

1945年8月15日、玉音放送。 終わったはずの戦争が、もう一度始まる――。 そんな帯のコピーに惹かれ、読み始めた浅田次郎である。 太平洋戦争末期、東京の出版社に勤める翻訳者・片岡は、兵役年限直前にまさかの赤紙を受け取り、医専卒の医師・菊池、歴…

Book Review 『世界から猫が消えたなら』(川村元気、マガジンハウス)

うちにも猫が1匹いるものですから、このタイトルと、子ネコが不安そうにこちらを覗く表紙の写真に惹かれ、つい買ってしまった1冊です。 著者・川村元気氏は1979年生まれというから、30代半ばでしょう。「映画プロデューサーとして『電車男』『告白』『悪人』…

Book Review『火怨(上・下)』(高橋克彦、講談社)

今回はBook Reviewであると同時にTravel Reportでもあります。 『火怨(かえん)』は、「泣けて泣けてたまらない小説だ」と友人から言われ、アマゾンで中古単行本を買って(上・下で800円)読み始めました。読了(2013.6月末)後の感想を言うと、大して泣け…

Book Review『一路(上・下)』(浅田次郎、中央公論新社)

読みました、浅田次郎の『一路(上・下)』(中央公論新社)――。 <小野寺一路、19歳。父の不慮の死を受け、御供頭(おともがしら)を継いだ若者は、家伝の「行軍録」を唯一の手がかりに、幕末、(西美濃から中山道を通って)江戸への参勤行列を差配する。>…

Book Review『海賊とよばれた男(上・下)』(百田尚樹、講談社)

さっき夕食をとりながら読み終えたのが『海賊と呼ばれた男(上・下)』(百田尚樹、講談社、2013年本屋大賞1位)。写真のバックに敷いたのは、たまたま本日(5月9日)付読売新聞など主要紙に掲載された出光のカラー全段広告です。「60年前の今日。日章丸は、…

Book Review『永遠のゼロ』(百田尚樹、講談社文庫)

『永遠の0(ゼロ)』(百田尚樹、講談社文庫)、読了です。零戦に乗り命を落とした祖父の生涯を、現代に生きるアラサーの孫たちが祖父の戦友たちを訪ね、証言を集める中で明確に認識していくというルポルタージュ風の小説。 文章、構成には多少の拙さが残り…

Book Review『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(村上春樹、文藝春秋)

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』読みました。駅舎をつくる36歳のエンジニア・多崎つくるの、はたちの年の「喪失」と、いま恋人に背中を押されて踏み出した「回復」の旅を、幽体離脱や悪霊、性夢などサイコロジカルな描写を絡めつつ淡々とつづ…