まるしん's diary

丸山伸一のブログです。日常の出来事(主にプライベート)、読書・映画評などを綴ります。

Book Review『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(村上春樹、文藝春秋)

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 『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』読みました。駅舎をつくる36歳のエンジニア・多崎つくるの、はたちの年の「喪失」と、いま恋人に背中を押されて踏み出した「回復」の旅を、幽体離脱や悪霊、性夢などサイコロジカルな描写を絡めつつ淡々とつづった作品でした。読み進むうちに、長ったらしいタイトルは、この小説にこそぴったり、と感じました。
 作品の良いところと悪いところについては、言及すればするほどネタバレになるので書きません。読んだ人とあれこれ話してみたい。ただし、個人的には、「えっ、ここで終わるの?」的なラストと、「シロ」殺人事件の犯人像にまったく触れようとしていない部分に、村上春樹の計算ずくのあざとさを感じました。前者は、「この先どうなるかは、読者が勝手に考えなさい」みたいな、後者は、「意識すれば犯人たる登場人物は複数いるだろうが、ボクの小説にサスペンスは期待しないでよ」みたいな、いずれにしても、筆者から試されているような気分になりました。
  (6月10日読了、FBアップ済み)