まるしん's diary

丸山伸一のブログです。日常の出来事(主にプライベート)、読書・映画評などを綴ります。

Book Review 『世界から猫が消えたなら』(川村元気、マガジンハウス)

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 うちにも猫が1匹いるものですから、このタイトルと、子ネコが不安そうにこちらを覗く表紙の写真に惹かれ、つい買ってしまった1冊です。

 

 著者・川村元気氏は1979年生まれというから、30代半ばでしょう。「映画プロデューサーとして『電車男』『告白』『悪人』などを製作。2011年、優れた映画製作者に贈られる『藤本賞』を史上最年少で受賞」と紹介されていますが、この文章の上手さ、読者を飽きさせない構成・展開は、月並みな言葉ですが「天賦の才能」と呼ぶにふさわしい。帯ではこの本を「人生哲学エンタテイメント」と紹介していますが、まさにその通りです。

 

 主人公は30歳の郵便配達員。余命わずかと宣告された直後、どこからか、こまっしゃくれた「悪魔」が現れ、「この世の中から何かを消せば、1日、また1日と生きられるよ」と持ちかけます。まず電話を消す(携帯も含め、です。これは読者のボクも大賛成)。それから映画、時計と消して、次はいつも一緒にいた愛猫「キャベツ」?…。
 

 かつて付きあった「彼女」が登場します。長いこと分かり合えず、言葉も交わさない時計職人の父親も登場します。以前に亡くなった母親の手紙(主人公に宛てたもの)も、ようやく開封されます。「死ぬまでに私がしたいことを考えてみたら、全部あなたのためにしたいことだった」。ああ、なんという母親の愛でしょう。これ、泣けます。そして主人公は、自分が最期にすべきことを悟るのです。それは、父に手紙を書くこと――。終盤の30ページはうるうるしっぱなしでした。

 

 3時間ほどで読み終えました。心地よい音楽を聴いていたような、3時間でありました。

 

 (「LINE初の連載小説として30万人が笑って泣いて考えた」本なのだそうです)