山の花の名前
きょう、小さな図鑑を買いました。『高山の花』(山と渓谷社、1,200円)。自分で図鑑を購入するなんて、何年ぶりだろう。
それというのも、最近、山に登るたびに思うことがあるからです。
「美しい高山植物が目の前にあるのに、自分はその花、木の名をほとんど知らない」
「同行者から尋ねられても、まるで答えられない」
先日の南アルプス登山の際は、落ち込みさえしました。バスの運転手は車内マイクを通し、道端に咲き誇る高山植物、樹木のひとつひとつについて名前、花の見ごろ、昨年との成長比較などをすらすら説明してくれます。仕事だからと言うのは簡単ですが、花、木に対する愛情無くして、このように優しい説明ができるはずはありません。ただ無我夢中で山道、岩、沢を登り、頂上に立ったら下りて来るだけの自分の登山は本当の登山ではないのではないか、あるいは大きな楽しみを知らぬ登山なのではないか、そんな気がしたのです。
北沢峠から甲斐駒・仙水峠、翌日の仙丈ケ岳への山道も、高山植物や、興味深い葉をつけた樹木が、まるで展示場のように肩を並べ、我々を待ってくれていました。なのに、そのどれをも名前で呼べない寂しさ…。そうして、ついに、図鑑を買いに走ったわけです。
上の写真は、タカラコウでしょうか。
さっそく、今回同行した太田芳登君撮影の仙丈ケ岳の植物の写真から数枚を拝借して、この図鑑と照らし合わせてみました。正解、すなわち正しい花の名前を見つけるのは、たやすいことではありませんでした。似たような花がたくさんあり、正確に特定するとしたら、花、葉、茎、根、分布などから総合的に判断する必要があるからです。ム、ム、ムリです。
↑ これはハクサンシャクナゲでしょう。標高2,500m以上のハイマツ帯に咲くのだそうです。葉に特徴がありますね。
↑ これも難しかった。ミヤマカラマツでしょうか。花びらのように見えるのは雄しべで、その形が深山(みやま)にあるカラマツの葉のようだから、この名がついたそうです。
↑ これは知ってました。ゴゼンタチバナ。赤い実をつけます。
↑ これも知ってる。チングルマです。稚児車と書くのです。羽毛みたいな毛が出てきて、それが幼児の遊ぶ風車のように見えるから、だそう。日本アルプスの代表的高山植物。群生してました。
↑ 最後の1枚。これはわかりませんでした。図鑑を見る限りはクガイソウのようにも見えますが、ちょっと違うようにも思えたり…。どなたかご存知の方、教えてください。
現地で「これはミヤマキンポウゲ」「あれはハハコヨモギ」などと言い当てられれば、それに越したことはないのですが、まずはカメラに収めた高山植物の写真を、後から図鑑を見て振り返る、そんなやり方で慣れようと思います。不思議なもので、先日歩いたあの道を、もう一度、別の視線、別の価値観で歩き直したような、そんな得した気持ちになりました。
次の山行に、この図鑑を持参します。残された登山の機会は何度あるかわかりませんが、目的の一つを「花の名前を覚える」こととする、そういう「余裕」を持った登山にしたいと考えています。