『ミッドナイト・バス』『ペテロの葬列』『怒り』『一刀斎夢録』~最近読んだ本 2014.2.27
最近読んだ本を、まとめておきます。(一部FBにアップ済み)
【2014年2月21日公開】ソチ五輪。朝方まで会社でLIVE映像観ながら新聞作り。タクシー帰宅すると、疲れてるのに、なぜか目は冴えちゃうんですね。読書がすすむクンったらありゃしない。『ミッドナイト・バス』(伊吹有喜、文藝春秋)3日間で読了。
前作『四十九日のレシピ』がドラマ、映画化されましたから、伊吹の名はご存じの方も多いはず。1969年三重県生まれの女性作家です。
家族の再生を描いた『四十九日のレシピ』とテーマは似ており、『ミッドナイト・バス』も、東京での仕事に挫折し、故郷・新潟で深夜バス運転手として働く49歳の男を主人公に、バラバラになった家族の再生、そして再出発をおだやかな筆致で描いています。
都会と田舎、市井に生きるさまざまな年代の老若男女が登場しますが、それぞれの心理描写と語り口調が、すっと飛び込んでくる感じで心地よい。将来に希望を抱かせるラストもさわやかです。泣ける部分も2、3か所。全体の構成がやや甘いのですが、星5つのところ3つは付けられます。
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【2014年2月11日公開】宮部みゆき『ペテロの葬列』(集英社)を読み終わりました。700ページ近い大作ですが、巨人軍宮崎キャンプ視察から帰京(2月8日)するバス4時間、新幹線5時間と、今まさに高梨沙羅ちゃんのジャンプを待つ会社の机で、一気呵成に読了です。ちなみに宮崎からバス、新幹線を用いたのは、前日来の関東大雪で羽田空港が一時閉鎖となり、飛行機が飛ばないことが予想されたため。
それにしても、大の宮部ファンの私でさえ、このラストには固まってしまいました。なんじゃ、こりゃぁ。言い方を変えれば「後味悪い」でしょうか。ネットのレビューを読んでも「男には納得しがたいラスト」「読後感が最悪」などと手厳しい評価が多いです。
財界の大物、今多コンツェルン会長の外腹の娘の婿になった「逆たま会社員」、杉村三郎が、様々な事件に巻き込まれるシリーズ(『誰か』『名もなき毒』)の第3作です。今回は、仕事で訪れた房総半島のはずれで杉村がバスジャックに遭い、その犯人の素性や突拍子もない行動の理由などを調べるうちに、豊田商事事件のような大型詐欺商法の残滓に巻き込まれ、ようやく事件のほぼ全貌がわかって一件落着か――という展開なのですが、この時点でまだ550ページ。
ネタバレになるのでこれ以上は書きませんが、その後の展開3様が、レビューに悪評を書いた人には「ありえねー」「蛇足」「読んで損した」となっているようです。男の沽券に関わる情けない状況に追い込まれ、失意のうちに「あずさ」で郷里・山梨に帰ることになった杉村が、いつの日か私立探偵となって第4作に登場してくれるのではないか、と微かな期待を抱かせるラストになっているのが救いです。宮部みゆきの圧倒的筆力と、社会問題の取材力は健在です
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【2014年2月4日公開】
上:1年前の東京・八王子での夫婦殺害事件の犯人は、この中の誰なのか…。3つの物語を同時並行的に進めていく中、それぞれ謎を抱えた男たちの怪しさを読者に問いかけるあたり、小説的技巧は見られるのですが、いかんせん、それが「じらし戦法」的に見え、読者は飽きが来てしまいます。
実はこの「怒り」、読売新聞の朝刊に半年にわたって連載された新聞小説に大幅加筆して単行本化したものです。それを知って、なるほど、と思う一方、だからこれほどまでに冗漫だったんだ、と新聞小説の弊害みたいなものを感じ、がっかり。
前にも書きましたが、吉田修一は『悪人』『横道世之介』『さよなら渓谷』など映画になった小説の原作者。吉田は常に「映画化」を意識して小説を書いていると思えます。まさにその計算ずくのあざとさが、彼のすべての小説に出ていると分かります。
一気に読めた、エンターテインメント小説であることは認めます。
【2014年1月26日公開】『一刀斎夢録』(上・下、浅田次郎、文春文庫)です。新選組の中では土方歳三と並んで、この本の主人公=語り手=である斎藤一(はじめ)が好きなのですが、長い割には、感情移入できないまま終わってしまいました。