『男ともだち』(千早 茜著、文藝春秋)~最近読んだ本
2015年2月25日読了。もろに世代ギャップを感じました。アラサー男女が演じる「月9ドラマ」の脚本みたいな内容だったから。でも古典文学の「恋愛論」のような懐かしい趣もあって、実は二晩で読み終えました(笑)。
主人公の女性は29歳のイラストレーター、神奈葵(かんな・あおい)。こまごまとしたイラストの仕事を引き受けて生活をつないでいるが、いつか「本当に描きたいもの」と出会い、それを表現したいと思っている。
3人の男たちとの付き合い方
私生活では、年下のサラリーマンと京都市内のマンションに同棲中。また、妻子持ちの医者とも、セックスのためだけの不倫をしている。
もう一人、大学時代の2年先輩で、富山で製薬会社営業マンをしている長谷雄(=ハセオ)が、10年ぶりにカンナの前に現れるが、カンナにとっては「互いが景色の一部になってしまうくらい一緒にいたけれど、私たちは恋人同士ではなかった。ただの一瞬も」という認識、「男ともだち」である。
物語は、さしたる抑揚もなくスローモーに進む。カンナの恋愛、性愛の遍歴と、イラストレーターとして認知されていくさまが淡々と描かれる。まず同棲相手、次に不倫相手の順にカンナは別れを選ぶ(言い換えれば「捨てる」)が、そのたびに傷ついて、するとハセオが「男ともだち」としてカンナを支えようと寄り添う。でも、相変わらず「しない」んだなー、この二人。
全編を通じ、女ごころの微妙な変化、複雑さと淡白さ、強さと弱さ、残酷さ、怖さといったものを上手に文章に落としている。小池百合子や村山由佳の世界と似た感じだ。
男と女は「ともだち」関係がベストか
ボクの読み方が浅いせいか、男と女は「ともだち」関係でいることこそが崇高で貴重なものという結論、一見青臭い恋愛論に読めてしまった。もう40年も前、ボクは高校生だったか大学生だったか、友人と朝までこのテーマで口角泡飛ばしあったのを思い出してしまった。(ボクは「男女間に友情は成立しない」の派だったか…ww)
ブランド物のファッションや香水、ジュエリー、巷で話題のショップ、レストランなどの名前が登場する。友人には元SM女王のクラブママもいれば、玉の輿セレブ主婦もいる。ラストは、これまた新しい恋愛物語が始まるようで…。トレンディ・ドラマとしての要素はたっぷりだ。
それゆえ作品がエンタメ系に急傾斜してしまったようで残念だ。作者が頑張りすぎたのかもしれない。