まるしん's diary

丸山伸一のブログです。日常の出来事(主にプライベート)、読書・映画評などを綴ります。

高校の先輩、遠藤湖舟さんの写真展~美は天空に、地上にあり

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 「湖舟(こしゅう)は本名ですか?」。初対面の人から必ず聞かれるという。遠藤さんが「そうです」と答えると、先方の反応は「いい名前ですね」「ご両親は芸術家になってほしかったのでしょう」「子どものころ、いじめられたりしなかった?」などさまざまだとか。

 ボクも、遠藤さんは湖舟という名前でなかったら、写真家にはなっていなかったと思う。いや、なっていたとしても、代表作「ゆらぎ」シリーズのように、水面が映す一瞬の美(上のポスターの2点もそう)を探し求めて時間を忘れるような、風景写真家ではなかったように思う。湖舟は「湖に浮かぶ小舟」。小舟はゆれる。水面もゆらぐ…。名を受けた瞬間から、遠藤さんはこのシリーズ写真を撮る運命にあったのだろう。 

日本橋高島屋を手始めに巡回展

 その遠藤さんが、今月(3月)25日から、日本橋高島屋8階ホールで大規模な写真展を開く。テーマは<「天空の美、地上の美。」~見つめることで「美」は姿を現す~>。上記「ゆらぎ」シリーズのほか、中学時代にその魅力に惹かれ、写真集『宇宙からの贈りもの』(2007年、講談社)に集約される天体写真など計130点が出展される。大型アクリルや特殊和紙にプリントされた大判作品に、屏風、掛け軸、映像なども駆使した迫力ある構成になっているそうで、楽しみだ。日本橋展は4月5日で終了するが、すぐに京都、大阪、横浜の高島屋を巡回するという。

(下の作品は「暁月暁星」) 

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 少年の純粋さを持った芸術家

 さて、遠藤さんは、ボクの出身高校(長野県松本深志高校)の2年先輩だ。在学中や大学、社会人と進む中で接点はなかったが、5年ほど前、在京の松本深志高校OB同窓会で知り合って以降、親しくさせていただいている。

 実に行動的な人で、「飲みましょう」と誘うと、マイカーを運転してやってくる。一滴も飲まなくても、最後まで付き合って話を聞いてくれる。ボクら山好きの仲間と一緒に、日本アルプスへ本格登山もする。その際は道すがら、あらゆるものに遠藤さんはカメラを向ける。樹木、花、草、鳥、空、稜線、谷…。ときどき同行者。「遠藤さん、足元注意!」と叫んだ時にはもう遅い。コケてしまっていることもしばしばだ。これまで怪我のないことが不思議である。
 (下の写真は2012年2月、冬の大菩薩峠にて)

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 しかも、もともと博識なのに人一倍、知識欲、向学心が旺盛で、いつも活字、インターネット、映像等で何かを勉強している。ユーモアに富み、かつ含蓄ある遠藤さんの言葉には感心させられてばかりだ。 

 まだある。遠藤さんは、ボランティアなど他人のために何かをすることを厭わない。東日本大震災以降は、被災地の仮設住宅に住む人たちに新鮮な野菜を届ける「野菜マルシェ」を南相馬市などでたびたび実施している。一度ご一緒させてもらったときの写真がこれだ(右から2人目、ひげの人が遠藤さん)。また、福島第一原発事故の影響に関し、科学的事実に基づく情報を共有することの大切さも、SNSなどで発信している。

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身のまわりにある「美」に覚醒 

  遠藤さんという人について縷々述べたのは、選挙に出るとかいう理由ではない。遠藤さんの「人がら」がどの作品にも滲み出ているからこそ、観る人の多くを魅了していると思うからだ。遠藤さんが、少年のように純粋な目でファインダーの向こうに見つける「美」は、ふだんボクらが見過ごしている(そういえば聞こえはいいが、実は「もう見えなくなっている」のかもしれない)「美」だと、瞬時に気づかされるからだ。こんな身近な場所で、こんな時間に、まさかこんな美しいものとボクたちは会えるのだ、ということに覚醒して、嬉しくなってしまう。

 昨年夏、神奈川県・葉山文化園で開かれた遠藤さんの写真展<そこにある美~立ち止まり、見つめて>を観て、虜になった。たくさんの人に見てほしい。今回の巡回展は絶好のチャンスだ。ボクの手元にも若干の招待券が残っている。

 

 最後に、遠藤さんのオフィシャルな写真を。かっけ~。1954年、長野県生まれ。早稲田大学理工学部卒。企業勤めの後、写真家に転向。人物、風景、天体など様々なテーマの写真を撮る一方、デザインやコピーライトなど総合的アート表現も行う。さらにフォトルポルタージュにも挑戦、「スポーツ報知」のほか雑誌の依頼で海外に取材・撮影に出かけることも多い。2006年から積極的に個展を開催している。

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